労務NEWS 10月号 副業・兼業の促進に関するガイドラインについて
企業も労働者も安心して副業を行うことができるようルールを明確化するため、令和2年9月に厚生労働省が副業・兼業ガイドラインを改定しました。内容について解説します。
はじめに
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、古くからの日本的労働慣行が変わりつつあります。副業・兼業に関する新たなガイドラインが厚労省から発表されました。以下、重要なポイントを解説します。
基本的な考え方
所定時間外の行動を本来制限できないことや、過去の裁判例などを踏まえ、新しいガイドラインでは「原則として副業・兼業を認めるのが適当」という方向が明記されました。従来の日本の労働慣行では「原則NG、ただし会社が認めた場合はOK」という考え方が主流であったことを考えると、大きな方向転換となっています。
会社が副業を制限して良い場合
新しいガイドラインによると、企業が副業を制限することが許される場合として、以下が挙げられています。
- ① 労務提供上の支障がある場合
- ② 業務上の秘密が漏洩する場合
- ③ 競業により自社の利益が害される場合
- ④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
これによると「同業他社で副業をする行為」などは制限の対象となりそうですが、たとえ同業であっても、顧客の個人情報やノウハウを持ち出していないなど、事情によっては制限できないと判断される可能性があります。
会社がすべき準備
1.基準策定
会社としては、あらかじめ副業・兼業を認める/認めないという判断基準を明確にすべきでしょう。自社の社員が選択する可能性のある副業を列挙し、それぞれの情報漏洩リスクや信用リスクを分析した上で、基準を示しておくことが望ましいといえます。
2.副業の状況を把握する仕組み【副業の制限基準表】
種類 | 情報漏洩 | 疲労 | 信用 |
同業他社 | × | × | ▲ |
飲食店 | ● | × | ● |
不動産賃貸 | ● | ● | ▲ |
他社役員 | × | ▲ | ● |
副業を認めた場合、それが企業運営上プラスになっているか、思わぬ不和や問題を生んでいないかなどを定期的に調査・検証しましょう。下のリストのような項目に注意しつつ、想定されるトラブルに対する対処法についてあらかじめ話し合っておくことが大切です。
ジャンル | トラブル | 対処法 |
労働時間 | 働きすぎて集中力欠如 | 警告/労働時間を月1回報告させる |
健康状態 | 働きすぎて病欠 | 警告/診断書提出 |
人間関係 | 社内行事に不参加 | 情報共有や別のコミュニケーションの場を作る |
【参考:厚生労働省 副業・兼業についてのWEBページ】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
労務NEWS・10月号を更新しました。副業・兼業の促進に関するガイドラインについて
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