社会保険適用拡大の企業規模要件等の段階的撤廃について
■現行の企業規模要件
現行の法律では、週20時間以上勤務する短時間労働者が社会保険に加入する企業規模要件は、「従前の基準による社会保険加入対象者(原則として週30時間以上働く従業員数)が51人以上」とされています。
■段階的な撤廃スケジュール
厚労省・日本年金機構の通知では、次のスケジュールで短時間労働者に対する社保適用対象企業の規模要件が縮小・撤廃されることになりました。
従業員数規模 | 施行時期 | |
1 | 51人以上 | 2024年10月 |
2 | 36人以上 | 2027年10月 |
3 | 21人以上 | 2029年10月 |
4 | 11人以上 | 2032年10月 |
5 | 1人以上 | 2035年10月 |
直近では2027年10月から従業員規模36人以上の企業が新たに対象となります。該当する企業に勤めるパートタイマーが社会保険への加入を希望しない場合は、勤務時間を週20時間未満に抑える必要が出てきます。
今後は上記のスケジュールに合わせて、パートタイマーの働き方の全体的な見直しが必要になることが予想されます。
■業種による対象外の段階的廃止
業種による対象外の段階的廃止
現在、個人事業のうち常時5人以上の者を使用する法定17業種(※)以外の事業所は、社会保険の強制適用対象から外れています。
しかし今回の改正により、2029年10月から常時5人以上の者を使用する個人事業は全業種が社会保険の強制適用対象となります(ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間対象外です)。
【※ 法定17業種】 |
■最低賃金との関係
現在、全国加重平均の最低賃金を1,500円に引き上げるという動きがあります。仮に時給1,500円で週20時間働くと、年収がおよそ156万円となり、社会保険の現在の扶養の範囲である年収130万円を超えることになります。
つまり、週20時間以上働くパートタイマーの多くは、今後社会保険の扶養から外れることが予想されます。そのための受け皿として企業規模要件を段階的に撤廃し、ほぼ全ての事業所でパートタイマーを社会保険対象とする方向が読み取れます。
今後10年以内には、「扶養の範囲でパートタイマーとして働く」選択肢がさらに狭められることが予想できます。法改正を踏まえて、今後のパートタイマーの働き方について早めに検討していきましょう。