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給与を過払いした場合に労働者から返還してもらえるか

メルマガ情報 2024.08.28

過払い給与返還の法律的根拠

過払い給与の返還に関しては、以下の民法の規定が関係してきます。

(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

この規定は、簡単にいうと「法律により本来受け取るべきでない人が受け取ったお金は返還しなければならない」というもので、給与・雇用に関連したケースとしては、例えば以下のようなパターンが考えられます。

  • 振込の間違いによる過払い
  • 住宅手当や家族手当の支給基準に当たらない期間に受け取った当該手当
  • 通勤経路を偽り受け取っていた通勤手当
  • 割増賃金の計算間違いによる過払い
  • 横領など不正に得た金銭

 

過払い給与返還の法律的根拠

過払いとなった給与(=不当利得)の返還を求める際は、以下の4つの要件を満たす必要があります。

  1. 他人の財産または労務によって利益を受けること
  2. 他人に損失を及ぼしたこと
  3. 1の利益と2の損失との間に因果関係があること
  4. 1の利益に法律上の原因がないこと

これは、「もらうべきでないお金が会社から労働者に渡っていること、そこに法律上の根拠がないこと」が証明できれば返還請求できるという意味であり、会社側の過失の有無は関係がない点に注意が必要です。

つまり法律上は「給与計算間違いをしたのは会社のせいだから返還に応じない」と労働者は主張できないことになります。

 

実際の対応策

過払いが労働者の不正によるものであった場合はともかく、会社側が給与計算間違いをした場合にはその根拠を示して丁寧に対応する必要があるでしょう。

具体的には、給与計算間違い等による過払い給与は以下のような手順で返還をしてもらいましょう。

  1. 計算間違いについて詫びつつ、就業規則、労働条件通知書などの根拠となる書類を示し「受け取るべきでないお金」であることを説明し、納得してもらう
  2. 返還方法について、分割返還も含めて協議する(労働者の同意なく給与から返還金を天引きすることはできません)
  3. 納得してもらえない場合、会社の計算間違いの過失分を考慮して返還金の減額なども検討する

 

その他の注意点

住宅手当や家族手当、通勤手当の支給基準を就業規則や労働条件通知書で明確に労働者に周知していない場合は、民法703条に基づく返還請求権が生じない可能性もありますので、支給基準をきちんと周知するように気をつけましょう。

 

労働問題や人事制度、業務効率化で悩まれている経営者は、ぜひご相談下さい。

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