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会社の飲み会に残業代を支払うべきか

メルマガ情報 2024.05.28

はじめに

X(旧Twitter)などのSNSで、「会社の飲み会に残業代は出るのか」という社長と社員のやり取りの動画が話題になっています。その動画内に登場する社長は「残業代は出ない。強制参加の業務ではないので来なくてもいい」と答えていますが、同時に「業務外では同僚とコミュニケーションをとりたくないという発言は敵を増やすだけなのであなたの得にならないよ」と諭していました。以下、会社の飲み会に残業代を支払うべきかについて法律的な観点で解説するとともに、このような問題にどう対処すべきかを考察します。

法律的な判断基準

会社の飲み会や懇親会、社員旅行、運動会などのイベントが業務に当たるか否かについては、「事業所内または会社が指定した場所で行われるか」と「使用者から義務付けられ、または余儀なくされたか」により判断されます。

社内イベントが以下のようなルールで運営される場合、それらは業務であり、つまりそのイベントの時間(場合によっては移動時間も含めて)は労働時間であると判断される可能性が高くなります。

 

    • 会社が開催場所を指定している
    • 会社から全員参加である
    • 旨が通達されている
    • 不参加の場合に理由を述べる必要がある
    • 不参加の場合に人事評価が下がる
    • 「新入社員歓迎会」などと銘打たれており実質的に不参加と言いにくい
    • 直属の上司から参加するように圧力がある

 

飲み会等に残業代を払わないために

逆に考えると飲み会等が業務ではなく、残業代を支払わないと会社が主張するためには、「自由参加であること」「人事評価に影響しないこと」を明確に伝えるとともに、実質的に断りにくい状況になっていないか気を配る必要があるでしょう。

過去には、くも膜下出血で死亡した労働者の労災認定をめぐって、「リーダーという立場上断れなかった飲み会の時間」を残業時間と認めたケースや、新入社員歓迎会の2次会でのセクハラ認定について「飲み会が業務の延長」と判断された例などシビアなものがあります。今後は世代間の価値観の違いによって頻繁にこの「飲み会残業代問題」が発生する可能性があるかもしれません。

実際の対応策

「飲み会に残業代は出ますか?」と質問された場面を想定して、飲み会文化を継続するか否かという観点から対応策を考察します。

①飲み会文化を継続したい場合

自由参加であり査定に影響しないことを明確に説明して誘い、断られても嫌な顔をしないのが大切です。あるいは飲み会を業務とみなして残業代を支払い、打ち解けたコミュニケーションをする会社行事として堂々と開催する方法もあるでしょう。なお、飲み会ではセクハラ・パワハラ・アルハラ(アルコールハラスメント)を厳格に禁じる企業姿勢も大切です。

②飲み会文化を継続しない場合

会社主導の飲み会を辞めてしまう選択肢もあります。その場合、飲み会の代わりのコミュニケーションの場を会社が用意する方法も検討できます。例えば社内にレクリエーションスペースや喫茶スペースを用意したり、社内SNSを導入してコミュニケーションを促したりといった代替案が考えられます。

在宅勤務手当と割増賃金

増賃金計算から除外できる手当

現在は「家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金および1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」を、割増賃金計算から除外できます。その理由は、それらが労働との直接的な関係が薄く、個人ごとの事情によって実費弁償的に支給されるものであるためです。そのため、例えば名称が住宅手当であっても、実費によらず一律支給されるものは除外できません。

在宅勤務手当とは

在宅勤務手当(テレワーク手当)とは、在宅勤務に伴って発生する水道光熱費や通信費等を補填する目的で支給する手当で、コロナ禍でにわかに普及しました。支給方法は様々ですが、日額100円〜150円や、月額3,000〜5,000円程度に定めるケースが多いようです。

算入しない場合とは

在宅勤務手当を割増賃金の計算基礎に含めないこととするためには以下の要件を満たす必要があります。

  • ①就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示されること
  • ②在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法であること

実費弁償分の計算方法

在宅勤務における実費とは主に「水道光熱費」「通信費」「事務用品等の購入費」ですが、その計算は以下の方法が考えられます。

①国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(国税庁FAQ)で示されている計算方法

具体的には、実費×在宅勤務日数/その月の暦日数×1/2で計算する方法が示されています。1/2の根拠は、1日の法定労働時間8時間は、24時間から睡眠時間8時間を控除した16時間の半分であることからです。

② ①の一部を簡略化した計算方法

これは、過去3ヶ月程度の平均実績をもとに①の方法で実費を計算して1ヶ月あたりの手当額を決め、以後固定額で支払う方法です。1回決めて終わりでなく、適宜見直す必要があります。

③実費の一部を補填するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法

これは、上記のような計算式で求める実費よりも低くなるように在宅勤務手当の単価を設定する方法です。実費よりも常に低い金額を支給するのであれば定額であっても実費弁償的であると言える、という理屈からです。

 

なお、既に割増賃金の基礎に算入している在宅勤務手当を算入しないことにする場合、労働条件の不利益変更に当たると考えられるため、労使で話し合って慎重に変更すべきでしょう。

労働問題や人事制度、業務効率化で悩まれている経営者は、ぜひご相談下さい。

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