松澤社会保険労務士事務所

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有給休暇と残業が両方ある場合の賃金計算

メルマガ情報 2023.05.15

基本的な考え方

年次有給休暇は所定労働時間を勤務したものとして賃金計算をします。月給制の場合は「欠勤控除をしない」という計算方法が一般的ですが、日給の場合は日給1日分で計算、時給制の場合は「その日に働くはずだった所定労働時間分」で計算をします。つまり基本的な概念としては、「年次有給休暇1日分=休暇を取得したその1日の所定労働時間分の賃金の価値」となります。

なお、有給休暇を取得した日の賃金計算方法について、「平均賃金:過去3ヶ月の賃金総額÷歴日数」や「標準報酬日額※:社会保険の標準報酬月額÷30日」による計算方法も認められています。※標準報酬日額とするためには労使協定が必要

 

半日有休とは何か

半日有休(半休)は労基法上の義務ではないものの、労働者の利便性を考えて半休制度を設けている企業は多いでしょう。前述した考え方に当てはめると、半日有休は「その日の所定労働時間の半分」の価値があるという考え方になりますが、実際には昼休みを挟んだ午前・午後(それぞれの労働時間数が異なる)で運用しているケースもあります。混乱を防ぐために就業規則などで半日有給について定義した方が良いでしょう。

【規定の例】

  • ① 年次有給休暇は、通常の所定労働時間(8時間)の半日(4時間)を最小単位として取得することができる。
  • ② 前項における半日とは、次のとおりである。
  • (1)午前休:午前8時から正午まで
  • (2)午後休:午後1時から午後5時まで

遅刻・早退及び私傷病欠勤は、会社が承認した場合に限り、年次有給休暇残日数を限度として半日又は1日の年次有給休暇と振り返ることができる。

 

半日有休と残業代

半休を取得した日に残業をした場合の取り扱いについては、①所定労働時間を超えた時間に対する通常の賃金の支払いは必要ですが、②実際の労働時間が法定労働時間を超えない限りは割増賃金を支払う必要はありません。たとえば、所定労働時間が8:00〜17:00(休憩は12:00〜13:00)の日について午前中(8:00〜12:00)に半休を取得し、13:00〜17:00まで勤務したのち17:00〜19:00の間残業をした場合、実労働時間は6時間で8時間以内であるため、超過勤務分について割り増しをしない通常の賃金のみを支払えば足ります。

 

変形労働時間制と半休

日毎に所定労働時間が異なる変形労働時間制の場合、有休1日分に対応する労働時間も所定労働時間に合わせて変動することになりますが、半日有休(0.5日)に対応する労働時間を所定労働時間に合わせて変動させる運用は有給休暇の時間単位付与という取り扱いとなり、労使協定により年5日に限られます。

時間単位の有休付与をしない場合、半休は所定労働時間によらず一律の取り扱いとすべきでしょう。

 

管理監督者となる「権限」を考察する

管理監督者の判断基準

労基法上の管理監督者と認められるか否かについては、以下の表の通り①賃金額②責任と権限③出勤の自由性④職務内容が主な判断基準となります。

判断基準の種類

内容
①賃金額 その職務の重要性に相応しい待遇がなされているか
②責任と権限 採用、解雇、人事評価、労働時間管理などの決定権、責任を持っているか
③出勤の自由性 タイムカード等で時間管理をされているか、遅刻欠勤による減給などがされているか
④職務内容 現場作業員でなく、全体を統括するような職務に就いているか

管理監督者と認められた事例

2022年8月のある裁判において、従業員規模30人程度の会社の営業部長職にいた労働者Aが管理監督者として認められました。

その際、Aの職務内容と権限について、以下のような内容であったことが管理監督者の根拠とされました。

管理監督者権限に当たるとされた根拠

  • ① 上位者(Aより上位の者)は社長と非常勤の専務のみ
  • ② 重役会議への参加
  • ③ 社内稟議書の決裁、退職届の受理の担当
  • ④ 採用面接の担当
  • ⑤ 主要部門の売り上げ目標の立案
  • ⑥ 従業員の賞与額の決定

この事例において、当該Aの年収は600万円〜670万円程度であり、職種によっては必ずしも高額とは言えないものでしたが、人事の権限や売上目標立案などの職務内容が正に「経営者と一体となって(他の労働者を)管理・監督する立場の者」である根拠とされました。

これは、管理監督者の判断が「権限」に重きを置かれることを示唆しているでしょう。

 

まず責任と権限を考える

過去の裁判官の発言には、以下のように責任と権限の重要性を説いているものがあります。

  • ・管理監督者の判断基準の優先度合としては、まずは権限や業務内容に重点をおいて考察し、その上で、労働時間が当該労働者の自由裁量に任されている場合には経営者と一体的立場にあることが裏付けられていると考えるのが相当である。
  • ・権限・責任や労働時間の自由裁量性といったものに比して給与・手当面の待遇は、管理監督者性の判断において補完的なものとされている。

管理監督者として扱う場合は、特に「採用、経営戦略の企画・立案、解雇、人事評価、経営者不在時の代行権限」などを担う立場であることを確認しましょう。

 

労働問題や人事制度、業務効率化で悩まれている経営者は、ぜひご相談下さい。

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